最初に、教科書の採択決定の過程がどのようになっているか、ご存知でない方々が多いと思いますのでご説明いたします。
(1)各市町村の教育委員会から指名された有識者による協議会によって、教科書の是非を検討したうえで意見をまとめる。
この協議会のメンバーは、学校教員だけでなく保護者も含めた異なった立場の方々が40~80名ほど召集されるそうです。ただ、指名が教育委員会主導ですので、ある程度意見を反映させやすいメンバーを選ぶことも可能です。おおむね、座長には教育委員会の意思を反映しやすい方を指名するそうです。
また、前回の表にあった市単独で採択している札幌市・旭川市など以外は、各支庁ごとに市町村教育委員会が連携して協議会をつくります。
ここでご注意頂きたいのは、各支庁の教育局は一切、教科書の選定にはかかわっていないということです。あくまでも単独で採択しなかった市町村連携による協議会は、各市町村の教育委員会主導で設置されます。
(2)協議会の意見をもとに各市町村の教育委員会が最終決定を行う。
単独で採択している市の場合は、教育委員会の採択権が重視されるようですが、複数の市町村で協議会を作った場合、協議会の意見がそのまま採択される場合がほとんどのようです。
ところで、有識者による協議会メンバーを指名する各市町村の教育委員会は、指導主事と呼ばれる学校教員経験者によって主に構成されています。また、各市町村の地方公務員という扱いのため、他の市町村への転勤はありません。
つまり、各地域地盤の小中学校教員あがりのメンバーの意見が比較的反映されやすいと言うことになります。年齢層的にも教育委員会の構成員は50代中盤が多く、政党的な背景に主導された学生運動を指導していた世代にリードされているのではないかという疑念も生じます。
さて、北海道の小中学校教員の出身大学はどこが多いかといいますと、圧倒的に北海道教育大学出身者が占有しています。しかし、ご存知のように、北海道教育大学は5都市に5つのキャンパスを持つという、地域ごとに卒業生の地盤地域が生じるような配置になっています。
数年前に実施された、教育大学の配置転換前は、岩見沢校が小学校教員養成課程のみの設置であることを除けば、のこりの4校には幼稚園~中学校教員養成課程がすべて設置されていました。
そこで問題になるのは、各地域ごとにどこの北海道教育大出身者が幅を利かせるかということです。大まかにまとめますと、下図のようになります(90年代の情報を基に作成しています)。
図について補足説明しますと、十勝管内は札幌・旭川・釧路の混在地域になりますし、胆振・日高あたりは5校すべての出身者が混在します。
札幌校の勢力が意外に狭いようにみえますのは、札幌市(政令指定都市)と北海道それぞれで教員を採用するためで、札幌校出身者は札幌市の教員の大多数を占めることになります。
岩見沢校に関しては、かつての各学年の定員が100名程度と小規模な関係で、学閥というほど強い勢力なのは南空知周辺に限られるようです。
そこで、前回の話にありました教育出版の教科書の占有率が高い地域とリンクさせて考えますと、旭川閥と釧路閥の勢力が強い地域ほど、教育出版の採択率が高いという事実が浮かび上がります。
前回にも書きましたように、教育出版の創始者は旭川校OBですし、釧路管内の教員関係者(大学教員も含む)は、数多く教育出版の教科書の執筆に携わっていました。
つまり、教科書内容の長短よりも、縁故的な要素が教科書選定にかかわりやすい土壌があるわけなのです。
ところで、旭川閥の牙城ともいうべき旭川市に関しては、前回の選定から圧倒的に教育出版色が薄くなっています。旭川市は、古くは永山学力テスト事件に端を発し、旭川閥の天下でした。
しかし、2006年度採択に向けた協議会では、座長以外のメンバーから「なぜ、教育出版にこだわる必要があるのだ。」という意見が多数噴出し、地理以外は教育出版を採択しないという英断を下しました。有識者が教育出版贔屓の教育委員会にNOを突きつけたということですね。この件に関しては、大変立派な決断であったと思います。
ただ、旭川の教育大附属中学は、いまだALL教育出版なのはどうしょうもないでしょうでしょうけどね。
余談ですが、旭川方面の塾は、国語の指導で頭を悩ましているそうです。旭川市が光村図書、附属中が教育出版、上川の他の市町村は東京書籍と採択がバラけた為に極めて一斉指導がしにくい状態に陥っているそうです。
どうせだったら、道教委が一括して教科書を決めればいいような気もしますが…。
さて、教科書採択1つに関しても、何らかの影響力を行使するこの学閥の存在は、他の面にも影響がないわけはありません。次回は、その点について考察してまいります。
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