そもそも、公教育について考察してみようと考えたきっかけは、1か月ほど前の懇意にしているある塾長さんとの会話が発端です。
その塾長さんから最初に言われたのは、
「進路指導一つをとっても北海道地場の学習塾は、中学校におんぶにだっこです。結局のところ、学校教育がなければ何もできないということなんでしょうかね。」
ということです。その件に関する興味深い記事が約1年ほど前なのですが、“全国私塾情報センター”のHPに掲載されていました。
★Sセミナー、R会 学習塾生徒獲得に知恵
来春、石狩管内の道立高校の学区制が変更されることに伴い、新たな生徒獲得策を導入する学習塾が相次いでいる。
人気校の倍率が上がるなど受験生の動向に変化があると予想されており、学習塾各社は特進クラスの新設や講師の質向上などに力を入れる。少子化で受験生の減少が続くなか、生徒の新規獲得、囲い込み競争が熱を帯びそうだ。
----------- 中略 ------------
道内学習塾大手の「R会グループ」のSセミナー(札幌市)とR会(帯広市)は生徒や保護者との面談の回数を増やすほか、中学校の教員との情報交換も密にし、進路指導を強化する。
学区変更で受験生の動向がどう変化するかを不安に感じる生徒や保護者が増えていることに対応する。
2008年5月21日付
ここで、気になったのは「中学校の教員との情報交換も密にし、進路指導を強化する。」するという部分です。中学校の教員と連絡をしなければ、満足な進路指導ができない塾であるということを、R会グループは露見しているといってよいでしょう。
北海道で塾生数がNO.1の塾がこれですから、他の大手塾も知れたものです。
では、それだけの精度が中学校における進路指導にあるかというと、それも否だと思います。
僕が2月まで担当していたある生徒の中学校では、担任教師が学力テスト総合Cの振るわない結果に驚き、裁量問題をターゲットにした設問の不出来を嘆いた挙句、標準問題採択校受験予定の生徒にまで、
「あなたの受ける高校もこんな出題がされるのよ。」と、受験情報のなさを露見していました。
また、終盤の進路指導でも、旧石狩4学区の中堅進学校(標準問題実施校:倍率1.2倍)志望の生徒を旧1学区の同等のレベルの高校(裁量問題実施校:倍率1.7倍)へと多数誘導する不可思議な指導をし、結果、多くの不合格者を誘発させる結果となったようです。
僕は、その担任教師の誘導を拒否するようにご家庭に強く念を押し、その生徒は無事に元々の志望校に合格しました。
もし、大手塾が進路指導のインシャーティブを握っていたなら、この中学校のような悲惨な状況は避けれたのではないでしょうか。
また、前述の塾長さんは、こうもおっしゃっていました。
「もし、大手塾の一角を担う塾が倒産して、多くの地域から撤退した場合、消費者の塾離れが加速するのではないでしょうか。」
つまり、学校教育に対する依存度が高まり、塾が衰退することを御懸念なさっているというわけなのです。
僕たち“北海道私教育プロジェクト”は、創始者である藤井文夫の遺志を継ぎ、そういった事態が起こった時に受け皿になる志ある私塾の振興活動を、積極的に行っています。
それは同時に、学校教育が真の教育の担い手として、あまりにも不完全な存在であることも認識しているからでもあります。
ここで、大手3塾の影響力が小さい道北のある都市で塾講師をしているGさんからの興味深い寄稿文をご紹介します。
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中一、二(四月から新中二、三)の生徒につきまして、彼らからいろいろと情報を仕入れているうちに、この街の公教育レベルを窺い知ることができました。
といっても数学だけですが…。とにかく酷い!!
・方程式、連立方程式の文章問題を授業で全くやっていない!
・円周角は一日の授業で終わり!
・関数に至っては式の意味や座標が分からない!
などという、想像を絶するものでありました。
もちろん学校によって多少の差はあるのですが、知識を構築する上で必要な演習が決定的に不足しているのです。
特にW中学校は地域柄、自衛隊さんのお子さんが多いのですが、そこに集中してダメ教師が巣食っている、という感じです。
道教委の思惑が見え隠れするのは気のせいでしょうか。
それでも幸いなのは、塾に通う生徒は少なからず向上心があるということです。例えば、三学期最後の授業で、正多面体について触れました。
「正多面体はこのように、正4,6,8,12,20面体の5種類しかない」
と言ったら一人の生徒が、「何故ですか?」と聞いてきました。
私は声を大にして言いました。「それは良い質問だ」と。そしてその理由を説明したところ、生徒の首が縦に動くんですね(笑)。
まあたかが数分の説明なので生徒一人一人が知識として習得したかどうかは不明ですが、少なくとも知的好奇心は満たされたと思います。
「算数」は「これはこうなる」ことを幼少期から徹底的に覚えるのに対し、「数学」は「何故こうなるのか」を考えることが非常に大事です。
時間の許す限り、生徒の疑問には答えてあげたいですね。
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知的好奇心を持ちながら、公教育のみに依存せざるを得ない子供たちにとって、学校教育がいかにだらしない存在かがわかります。文中のGさんの行っている指導は、本来、学校教育の中で行うべきことではないでしょうか。
大手塾が教室展開しない地域は、経営ラインを満足させる塾生数を確保できないという事情もありますが、望むべく学力レベルに達していないことも一因であると僕は考えます。
つまり、公教育のみが存在する地域では、一層の学力低下が進むことが予想されるのです。「塾の撤退=地域の学力レベルの衰退」となる北海道の公教育は、何が問題なのでしょうか。
次回から、さまざまな観点から考察していきます。
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