★春期講習無料、入会金免除…、塾の割引戦争過熱
4月の新学期を前に、札幌圏など道内の学習塾が春期講習や入会金などの無料・割引を打ち出し、生徒獲得競争でしのぎを削っている。少子化と業界内の過当競争で3,4年前から始まった全国的な現象だが、不況の深刻化で追随の動きが拡大。
函館でも母子家庭の子供などを対象にした月謝200円の学習塾が人気を呼んでおり、学力アップと「格安」が、塾選びの重要な判断材料になっている。
無料・割引の動きは、札幌圏や旭川などが中心。①数日間の春期講習会の受講料無料や割引②数日~1か月の無料講座-などが主体で、入会金免除や兄弟割引など多種多様だ。
秀英予備校(静岡)の中津充北海道本部長は「無料講習申込数が2月末で、昨春の受講数を超えた。手応えは十分。」と話す。
複数の関係者によると、塾の無料・割引競争が始まったのは2005年。道内進出直後の同予備校と北大学力増進会を展開する進学会(札幌)が、夏期講習の「ゼロ円戦争」で激突。戦いの舞台はその後、新規申し込みが年間で一番多く、経営を大きく左右する「春期」に移った。
当初は一部の動きだったが、例年数百人の新規生徒を集めていた塾が、無料講習を見送り、「生徒半減」の憂き目に遭う例も。今年は特に中小の塾も含めた無料・割引ラッシュになっているという。
理由は世界的な経済危機による不況の深刻化。学習塾の受講料は年間30~40万円になるため、重い負担に苦しむ家庭が増えた。札幌の四十代の主婦は「中2の長男を塾に通わせているが、次男までの余裕はない。無料はありがたい」と話す。
札幌の現役予備校TANJIの丹治典久代表は「受講料などの免除制度の利用者が前年比6,7割になっている」と説明。道央圏の個人塾も「月謝の分割払いや支払い遅れが出始めた」とこぼす。
一方、週1回の授業で月謝が英語200円、理数500円という函館の市民団体「母子家庭教育支援協議会」運営の学習塾は現在、幼児から高校生まで191人が在籍。1年半前の開塾時から、生徒数は6倍以上増加した。
同協議会の森田実代表は「経済的に苦しい世帯が多く、当初の母子家庭の子供限定という条件を途中で撤廃した」と言い、新年度からは同市内に教室を増設する予定だ。
さらに、4日の公立高入試で登場した裁量問題が難問だったため、業界には追い風との見方も浮上。ある塾の関係者は「価格競争とも相まって例年以上に激しい生徒争奪戦になりそう」と話す。
出典:『北海道新聞』2009年3月8日付
北海道新聞のこの記事に関してコメントしますと、客観的な事実に対し、表面的な取材が多く、額面通りに受け止めると誤解を招く部分が多々ありますね。
まずは年間の塾費に関してですが、学年の記載がないのはおかしな話です。最も費用的にかかる中3生の場合、ある大手塾では月謝が27,000円、夏期・冬期講習費用が各30,000円、その他各種のゼミをすべて受講すると年間60万円を超えるケースもあります。
その塾はもちろん春期無料を打ち出しています。つまり、春期講習でのダンピング分を年間の他月の月謝や各種ゼミ費用に振り分けているだけで、けっして消費者には優しいわけではないのです。記事中の主婦のように短絡的に判断するのは危険なことです。
費用面では、現役予備校TANJIのように兄弟生割引を設定してくれている塾を評価すべきでしょう。札幌圏ではないですが進学塾シード(小樽市)では、兄弟生の月謝は1名分のみと打ち出しています。費用面主体で塾を選ぶなら、年間経費を比較することが大切です。
上記記事の「ゼロ円戦争」を始めた2大手塾は、春期講習の経費こそ安いのですが、年間では60万円近い負担になることを認識すべきでしょう。
では、入試裁量問題による追い風は、どこに吹くのかということです。最近の「北海道の塾考察第2部」の読者反応を見る限り、大手塾にはむしろ逆風というのが適切でしょう。
大手塾は“入試速報番組”におけるボーダーライン設定法の杜撰さから、裁量問題や新制度入試に対する対応力のなさを露見しました。何年間も変えるつもりのない週当たりの指導時間数(5時間程度)の枠がある限り、どういじろうとも期待はできません。
逆に、大手以外の塾ではその対応をフレキシブルに考えている塾も多いのです。たとえば、皆川学習会(函館市)では、すでに中学生の指導時間数を1.5倍にすることを打ち出しています。もともと指導時間数が、他塾の平均時間数の1.5倍である現役予備校TANJIとほぼ同等になるわけです。
こういった指導に対する試みを行う塾には追い風は吹くでしょうが、分析力もなく看板だけで運営している大手塾には逆風しか吹かないでしょう。
ましてや「ゼロ円戦争」において戦略ミスを喫し、この不況下で月額授業料アップを打ち出した練成会グループの経営姿勢には疑問符しかつきません。予想ボーダーラインでの分析力のなさの露呈とも相まって、苦しい経営が強いられるのではないでしょうか。