和田中とSAPIXの対応を考察していくと、このシステムを他の道府県で運用可能かどうかが私の最近の関心事項です。特に、教育後進地域ともいえる北海道でこのシステムを模倣し運用できるかが興味あります。
しかし、現状ではかなり困難であるといわざるを得ません。
(1)資本力
夜スペは採算を度外視した地域貢献として実施されるものです。それを実施するには、企業としての経済的余力がなくては不可能です。北海道の大手塾にその力があるかというと、かなり厳しいでしょう。
まず静岡に本社のある秀英予備校の場合、御膝元の静岡から夜スペの企画を立てるでしょうから今回の論点からは除外して考えます。
(株)進学会(北大学力増進会)は経営的にはかなりの優良企業で、平成19年度末決算では無借金財政であったことが知られています。ただ、最近の大株主を見ると外資系の比率が高くなってきていますので大株主の意向上、利潤を生まない部門への進出はかなり困難な情勢といえます。
練成会グループは、年間約60億円と(株)進学会に迫る売り上げはありますが、ここの経営はそれほど好調ではありません。自社ビル建設率が高いことによる北海道銀行からの借金が多く、返済にはかなりの年数がかかるといわれています。ましてや、(株)ナガセ系列の新事業や携帯電話を利用した安全サービスなどの投資がかさんでいますから、今後の新規部門は利潤中心になるでしょう。
(2)教務力
道内の大手3塾は共通して、公立高校受験の補完を行う“補習塾”として発祥しています。つまりSAPIXのように知的好奇心を育む教務体制を全くと言ってよいほど構築していないわけです。
唯一、練成会グループは理科教室を運営していますが、これとて(株)ナガセのシステムを流用しただけですから、自社でのノウハウはないといってよいでしょう。
SAPIXの“夜スペ指導”は、単なる受験指導ではなく「学ぶことの面白さ」を子供たちに指導していることも評判をよんでいる一因となっています。そのような授業は、北海道の大手塾にはできないでしょう。
(3)他の塾では?
「道内学習塾の生き残り戦争-3.5章-」でも書かせていただいたように、札幌市「現役予備校TANJI」の丹治代表は“夜スペ”に興味を持たれております。
(2)の内容でふれた知的好奇心を育む指導は、大手塾ではなく地域に根ざした志ある私塾にこそその資格があるのではないでしょうか。前述のTANJIや志学会が参入するなら、北海道版“夜スペ”は実りのあるものになるに違いありません。
しかし、丹治代表の言葉にあるように、志ある私塾は大きな教室展開をしないことによって塾のレベルを保っているのが現実です。「“夜スペ”への余力は残念ながらない」と……。
大手塾には教務をリードする資格はない。さりとて志のある私塾には余裕がない。これが北海道の塾の現状です。それゆえに私が思うのは、公教育の現場がもっと個々の生徒に向けた指導を充実していく道以外、北海道には方法がないということでしょう。
大手塾が万が一北海道版“夜スペ”に参入したとしたら…、それこそ「夜スペ反対論者」の指摘する受験指導のみを増長する営利指導を公教育で展開するだけになるのではないでしょうか。