(3)東京都に続くのはどの道府県か?
他の地方公共団体はともかくとして、大阪府は“夜スペ”を評価し、池田市において2学期から導入するようです。以下の記事をご覧ください。
大阪府池田市教委は、塾講師による有料の夜間塾「夜スペ」や教員志望の大学生による補習「土曜寺子屋(ドテラ)」で知られる東京都杉並区立和田中学校にならった教育改革を検討している。2学期にもモデル校1校で先行実施する予定だ。
和田中の夜スペは、進学塾と契約し、学校の授業に加えて自発的に学びたい生徒に、塾講師が放課後などに校舎で教える。池田版は、保護者や地域に住む塾講師らが教え、無料とする予定だ。
また、授業に遅れがちな生徒向けのドテラや、世の中の仕組みを学ぶ「よのなか科」の導入も検討する。将来的には市内の5中学校すべてで取り組む考えだ。
一方、大阪府の橋下徹知事は、和田中の藤原和博・前校長(52)を、教育分野の助言役として迎えることを明らかにした。
橋下知事は地域住民を巻き込んで学校を活性化させる手法に関心を持ち、6、7月に藤原さんと2度会い、指南役になるよう求めた。藤原さんは朝日新聞の取材に「大阪は学校と地域のつながりが割と濃く残っている。学校に世の中のエネルギーを取り込むことで、学力を向上できれば」と話している。
出典:『朝日新聞』2008年8月4日
ほとんど記事の紹介で終わるかも知れない今回ですが、まず橋下知事の発想に拍手を送ります。
大阪府といえば、財政再建団体入り一歩手前で、緊縮財政の急先鋒(悪く言えばケチ)が橋下知事が、このような英断をするとは思いませんでした。さすがに民間の血を引く知事だけあって、公教育と私教育の間に垣根がないことをよくご存知です。
藤原氏の助言をもとに、良い方向に進めばとエールを送ります。
しかし、池田市の発想は、ちょっと方向性が違いませんか。これでは単なる「放課後補習」でしかありません。まあ、学校教員が補習対応をしない分、他のものに任せるというのはよいでしょう。
なぜ、そこに塾の力を全面的に借りないのでしょうか。塾以外の者が担当するクラスと塾講師が担当するクラスでは、指導に差が出てしまいます。いわば、差別です。
学力別にクラスを設定しようと、ほぼ同等の教務力のある講師が指導してこそ平等でないでしょうか。中途半端な導入をするよりも、全面的に塾講師で指導するほうが、生徒にとってもよいことでしょう。
ただ、このように何らかの改革をしようとする姿勢は評価に値します。
もっと問題なのは、学力低下を認識しながら何もしない自治体です。たとえば、全国学力テストの下位に沈む北海道は、無策のままでよいのでしょうか。
確かに、担当しうる志ある塾は少ない地域ですが、それでも何か考えることはあるはずです。
教育は、生徒のためにある。大人はそれを良質にする義務がある。それが私の主張です。決断さえあれば、すぐできることなのですから、北海道には前向きな検討を望みます。
(2)私教育業界の反応はいかに?
SAPIXやトライ以外の私教育企業は、“夜スペ”をどのように捉えているのでしょうか。
まあ、うまい汁を2社だけに吸わせるわけにいかないという動きは当然出てきます。もっとも、“夜スペ”自体は利益を生みません。大切なのはその宣伝効果です。
“夜スペ”反対論者の方々が、異常なまで過敏に反応してくれたおかげで、SAPIXやトライにとって、企業イメージをアップさせるのに大きく役立ったのです。
先行したSAPIXを例にすると、学校側との連携がうまくいったことによって、好感度はかなりアップしています。事実、都内の私立中高11校から問い合わせがあり、うち6校で授業を始めているとのことです。夏期講習の募集も、かなり成功したようです。
そうすると、他の塾も“夜スペ”効果を無視できなくなります。「どうやったら学校に売り込めるのか」「こうした塾に、塾生を取られてしまうのではないか…」と悩むのは当然でしょう。こういう他を追従するやり方は、北海道の大手塾でいうとR会的で、見苦しいとしか言えません。
そもそも、先駆者以外は注目されないのが世の常であるということに気付いていないのは情けないことです。古い話ですが、アポロ11号と17号の注目度の違いを考えれば納得いくでしょう。
塾業界は、和田中とは異なる公教育との連携を模索するべきです。
栄光ゼミナールのように「学校で安く塾の授業をすると、すでに塾に通っている生徒には不公平になる。学校で塾の宣伝をするべきではない。和田中のなし崩し的な取り組みは、ほかの学校や塾に、ある意味迷惑だ」というのは僻み根性丸出しすぎですが、対応方法の異なる連携を模索するのは必要なことでしょう。
さて、東京都以外はどうするのでしょう。それは次回にて。
気がついたら、4か月も“夜スペ”の話題にふれていない……。困ったもんです。
ただ、4か月もたつと“夜スペ”の話題もいろいろと進展が出てきます。その後の経過について、何回かに分けて考察していきます。
………………………
(1)その後の杉並区和田中の取り組みについて
ご存知のように、“夜スペ”を企画した藤原和博校長は、3月31日付で校長を辞し、4月からは同じ民間出身の代田昭久氏が引き継いでいます。
その代田校長の次なる改革は、“夜スペ”の機会拡大でした。具体的に申し上げると、次のように改革しています。
①5月下旬からは、成績に関係なく希望者全員の受け入れを開始する。
1月スタート時には、資格試験を実施し、合格した現中3生18人を選抜してコースをスタートさせたわけですが、5月下旬より追加メンバーのクラスを作っています。
代田校長の考えは「もっと勉強したい子には全員にチャンスをあたえたい」という、とても寛容な考え方でした。新たに中3生129名に募集したところ、24名が応募してきたということです。
1月スタート時と異なったことは何かというと、資格試験を実施せず、希望者をすべて受け入れたということです。
“夜スペ”の指導を行う「学習塾SAPIX」は、前にもふれたように首都圏著名高校の合格実績が優れた進学塾です。SAPIXの指導レベルにすべての生徒が対応できるかという問題点が生じるわけですが、その点は次のように対応しています。
②個別指導部門をつくり、「家庭教師のトライ」が新規参入
①のように、まず希望者全員にSAPIXの指導を体験させます。指導内容が自分に合わないと感じた生徒へは、「家庭教師のトライ」が派遣した講師による個別指導が受けられるということです。
教育の機会均等という観点から考えて、この取り組みはかなり前進と言えるでしょう。“夜スペ”スタート時の非難の中に「上位生のみを対象とした指導をすることが不公平である。」という意見が根強くありましたので、そういった非難をした人々は矛先を下げるしかないでしょう。
ある程度のレベル分け指導もできる素地ができたのですから、この形で公教育と私教育の連携を推進してほしいものです。
ただ、1点だけ、気になることがあります。
しかし、何で「トライ」なんでしょう。確かに家庭教師業界では「トライ」は著名ですが、影のイメージも多いところです。そのイメージを払拭するために参入したと考えると、何か汚い企業的な駆け引きがあったようにも感じます。
他の私教育企業も、企業イメージのアップのため“夜スペ”に参入する動きが出始めています。その辺のところは次回にて。
和田中とSAPIXの対応を考察していくと、このシステムを他の道府県で運用可能かどうかが私の最近の関心事項です。特に、教育後進地域ともいえる北海道でこのシステムを模倣し運用できるかが興味あります。
しかし、現状ではかなり困難であるといわざるを得ません。
(1)資本力
夜スペは採算を度外視した地域貢献として実施されるものです。それを実施するには、企業としての経済的余力がなくては不可能です。北海道の大手塾にその力があるかというと、かなり厳しいでしょう。
まず静岡に本社のある秀英予備校の場合、御膝元の静岡から夜スペの企画を立てるでしょうから今回の論点からは除外して考えます。
(株)進学会(北大学力増進会)は経営的にはかなりの優良企業で、平成19年度末決算では無借金財政であったことが知られています。ただ、最近の大株主を見ると外資系の比率が高くなってきていますので大株主の意向上、利潤を生まない部門への進出はかなり困難な情勢といえます。
練成会グループは、年間約60億円と(株)進学会に迫る売り上げはありますが、ここの経営はそれほど好調ではありません。自社ビル建設率が高いことによる北海道銀行からの借金が多く、返済にはかなりの年数がかかるといわれています。ましてや、(株)ナガセ系列の新事業や携帯電話を利用した安全サービスなどの投資がかさんでいますから、今後の新規部門は利潤中心になるでしょう。
(2)教務力
道内の大手3塾は共通して、公立高校受験の補完を行う“補習塾”として発祥しています。つまりSAPIXのように知的好奇心を育む教務体制を全くと言ってよいほど構築していないわけです。
唯一、練成会グループは理科教室を運営していますが、これとて(株)ナガセのシステムを流用しただけですから、自社でのノウハウはないといってよいでしょう。
SAPIXの“夜スペ指導”は、単なる受験指導ではなく「学ぶことの面白さ」を子供たちに指導していることも評判をよんでいる一因となっています。そのような授業は、北海道の大手塾にはできないでしょう。
(3)他の塾では?
「道内学習塾の生き残り戦争-3.5章-」でも書かせていただいたように、札幌市「現役予備校TANJI」の丹治代表は“夜スペ”に興味を持たれております。
(2)の内容でふれた知的好奇心を育む指導は、大手塾ではなく地域に根ざした志ある私塾にこそその資格があるのではないでしょうか。前述のTANJIや志学会が参入するなら、北海道版“夜スペ”は実りのあるものになるに違いありません。
しかし、丹治代表の言葉にあるように、志ある私塾は大きな教室展開をしないことによって塾のレベルを保っているのが現実です。「“夜スペ”への余力は残念ながらない」と……。
大手塾には教務をリードする資格はない。さりとて志のある私塾には余裕がない。これが北海道の塾の現状です。それゆえに私が思うのは、公教育の現場がもっと個々の生徒に向けた指導を充実していく道以外、北海道には方法がないということでしょう。
大手塾が万が一北海道版“夜スペ”に参入したとしたら…、それこそ「夜スペ反対論者」の指摘する受験指導のみを増長する営利指導を公教育で展開するだけになるのではないでしょうか。
どうも、“夜スペ”について考察すると、「道内学習塾の生き残り戦争」みたいな1本の大木のような論点になりませんね。困ったもんです。
私を憤らせて寄り道をさせてくれるのは、日々更新されている反対論者の「反対するためにどういう理由や言い訳をするか」というレベルの低いブログや記事が氾濫しているからです。
反対論者の論点は、大まかにまとめると次のようになります。
(1)和田中校長藤原氏が民間(リクルート社)出身で教育現場を分かってない
結論を先に言うと「論外!」ですね。「吹きこぼれ」対策として入会テストを伴うコースとして“夜スペ”を始めた事がいかんというわけです。
藤原校長が“夜スペ”以前に「学校寺子屋」という補習システムを立案実行していたのはご存知なのですかね。民間企業を知る者には、教員社会の温さには反吐が出るほどの嫌悪を抱くものが多いのは事実です。
すなわち、教員社会に任せていたのでは「落ちこぼれ」も「吹きこぼれ」も永遠に救済できないことを実感した上での行動であったといってよいのではないでしょうか。もし、教員が疑念を持って改革を考えていたなら、このような問題は20年以上前にすでに解決しているはず。
藤原校長が教育現場を知らないというのなら、教員は競争原理の成り立つ社会を知らない愚民集団であるというだけでしょう。百歩譲って言うなら、教員に教科指導力を身につけさせられない文科省や日教組の対応に問題があります。
(2)入会テストがあったり、授業料があるのはおかしい
「学校寺子屋」においては、1000円程度の教材費のみですべての希望者に補講を行っているのに、“夜スペ”では入会テスト合格者のみに18,000~24,000円の授業料をとる指導を行うことがおかしいということですかね。
まずは、入会テストの必要性からいうと、必要です。塾と中学校の指導の大きな相違点は、学力レベルに合った指導を提供するか最大公約数の指導をするかという点でしょう。
そもそもSAPIXがどのような塾かをご存知なのでしょうか?この塾は補習塾ではありません!北海道の大手塾に見られるような中学校指導の補完を目的とした低レベルの塾ではないのです。
SAPIXの通常コースでは、中学3年間の学習内容を2年で終了させるカリキュラムをとっています。残り1年で様々な応用力を身につける指導を行うのです。また、この塾のテキストはかなりの練度で、原則1授業で1冊が配布されるシステムをとっています。
「高校への数学」という数学講師のバイブルとも言うべき雑誌をご存知ですか?この雑誌の記事は何名かのSAPIX講師が執筆しています。これだけでもSAPIXの指導力が類推できるはずです。
つまり、その指導を受けるだけの素養が生徒にあるかどうかを見極めることが必要になるため、入会テストは必要になるわけです。今の“夜スペ”の問題点をいうなら、もう少し学力別のクラス分けを細かく設定できればよいのでは?とも言えますが、それは今後解決される問題でしょう。
授業料に関しては、破格に安いと思いませんか?SAPIXの通常コースなら50,000円はするでしょう。いかに学校施設利用で光熱費を免除されているとはいえ、この金額は採算ぎりぎりもいいとこ。「でも儲けているんじゃないか!」と非難する人たちは、民間企業を知らなすぎです。民間企業は、将来的に大きな利益を生まないと分かっていることには投資しません。また、“夜スペ”に対する教材は、わずか11名の生徒のためのオーダーメイドです。こんな無駄は、営利だけを求める企業ではあり得ません。
SAPIXの今回の取り組みは、教育を通じた地域貢献としての行動に過ぎないのです。現状の教育を憂慮して「自分たちにできることは何かないか。」という発想のもと、各中学に放課後授業企画DMを送ったわけです。それに素直に反応したのが和田中の藤原校長であったというだけのことです。
はっきりと申し上げますが“夜スペ”は企業の求めるレベルの利益が生み出す活動ではありません。この活動ができるのはSAPIXに体力があるからです。1企業の慈善的な活動を否定する方々は、他の塾の営利主義のひどさをもっと知るべきでしょう。
ちなみに「“夜スペ”はSAPIXにとって良い宣伝になった。」と考えている方々へ。あなた方が変に騒ぎすぎたから“夜スペ”が大きな話題になったのです。早い話、SAPIXの宣伝をしたのはあなた方です。
(3)公共施設を営利団体である塾が利用するのはおかしい
“夜スペ”が初めてのケースだと思っているのですかね。私の住む北海道では、公立高校(札幌圏有数の進学校)が、夏休み・冬休みに大手予備校の講師による講習を実施していますが、その件での非難は聞いたことはないです。また、北海道には十勝管内の一部町村で、公営機関が学習塾を運営していたりします。
「それは田舎だからでしょう!」と非難するなら、東京の例をあげましょうか。港区の一部の中学校や江東区の全中学校では、塾講師による特別講座が区の支援を受けて実施されているのはご存知でしょうか。和田中は、区の支援を受けていませんね。「公共施設を営利団体である塾が利用するのはおかしい。」というのなら、港区・江東区の区政を訴えるのが先じゃないですか。塾に公的資金を投入しているのですから。
逆に、公的支援を受けていないからお礼程度の月謝を受け取っているのでしょう。支援があれば、もっと安く、そしてもっと多くの生徒に受講させられますよ。
(4)和田中校長が入札をせずにSAPIXに委ねたのがおかしい
これも結論を先に…「論外」です。そもそも企画したのはSAPIX、他塾はそのような考えなどなかった。つまり、入札自体が成立するわけがなかったのです。他塾に声をかけるより、まず行動することが大切だったのではないでしょうか。
(5)このような活動は教員がすべきでないか
前述のように、教員にできるのなら20年前に確立していますよ。できないから、こうなっただけにすぎないのではないでしょうか。
もし、志の高い教員がいるならSAPIXの指導ノウハウを吸収することを考えてはいかがですか?受講した生徒たちからは「知的好奇心をくすぐる授業」として評判ですよ。
本来なら、今回は対論編③なのですが、いろいろと夜スペニュースが出回ってますので、その話をさせていただきます。
まずは、東京で行ったアンケートの記事です。
「夜スペ」賛成57%。多摩市の調査会社アンケート(東京)
杉並区立和田中学校で1月下旬から始まった進学塾講師による有料の夜間授業「夜スペシャル(夜スペ)」について、多摩市の調査会社「キャリア・マム」(堤香苗社長)が会員を対象に行ったアンケート結果をまとめた。賛成は57・8%に上り、好意的に受け止める人が多かった。
同社は、主婦のマーケティングリサーチ(市場調査)を中心に事業を展開しており、会員には小、中学生の子どもを持つ母親が多い。身近な問題として「夜スペ」に対する考えを知ろうと、1月11~15日、同社のホームページ上でアンケートを実施。20~50歳代の男女計393人が回答した。
「夜スペ」への賛否では、賛成が57・8%、反対は42・2%だった。賛成理由では、「塾より安い」「意欲のある子どもには、いい機会」などが多く、反対理由では「成績上位者に絞ることで格差が生じる」がほぼ半数を占めた。
また、「子どもが通う(予定の)中学校でも同じ取り組みを実施してほしいか」では、「やってほしい」が43・5%で、「やってほしくはない」の24・4%を大きく上回った。「通い慣れた中学校だと安心。(塾に比べ)費用が半額なのもうれしい」(川崎市の40歳代女性)など、安心感と割安感への期待が反映された。一方、対象者を成績上位者に限定していることについては「いじめにつながるのでは」(多摩市の女性)といった批判も目立った。
同社は、「さらに他の学校に広がる可能性はある。教師以外の専門家による授業の導入を要望する声もあり、民間参入への期待が高まっているのでは」としている。
出典:『読売新聞』2008年3月7日付
このアンケートを見る限り、小中学生の親である主婦層には「私教育の参入」は かなり好意的に見られているといってよいでしょう。反対意見が42.2%ありますが、その理由の半数が「成績上位者に絞ることで格差が生じる」ということなので、中下位者に対応する夜スペを実施するなら、賛成意見に回る層をかなり含んでいるといってよいのでないでしょうか。
小中学生の子を持つ親世代にとって、“夜スペ”への好意的な反応は公教育不安に直面していることの表れと言ってよいのでないでしょうか。和田中1校での実施は、今後へのモデルケースですから、類推を静かに見守って検証すべきでしょう。
しかし、愚かな都民がいるのも悲しい事実です。
「夜スペ」は公共施設の目的外使用 正式実施の中止求め仮処分申請
東京都杉並区の区立和田中学校(藤原和博校長)が、大手進学塾と提携して試験的に実施している有料の受験対策授業「夜スペシャル(夜スペ)」をめぐり、同区の住民49人が24日、「夜スペは公共施設の目的外使用」などとして、区などに4月からの正式実施の中止を求める仮処分を東京地裁に申し立てた。
申立人には、和田中の保護者は含まれていない。申立人らは、夜スペが大手進学塾1社と契約を結んでいることから、公共施設が一部企業の営利目的で使用されることになり、違法行為に当たると主張している。
夜スペをめぐっては、当初、東京都教委が義務教育の機会均等の観点から問題があると指摘したが、協議の結果、「学力向上という公共の利益のためで違法には当たらない」と判断。今年1月から試行的に実施されている。
出典:『産経新聞』2008年3月24日付
この仮処分を申請した住民たちには、どんな不利益があったというのでしょうか。和田中の施設を借りることを断られたとでも言うのですかね。直接の不利益が存在しないのに訴えることを世間では「ひがみ」「やっかみ」と言いませんか?
この動きには、何か裏があるような気がするのは私だけでしょうか。反対勢力である教員組合グループとか区議会で反対を表明した某政党の関係者によって扇動された胡散臭い雰囲気がプンプン臭ってきます。
まあ、斬新な行動する際には、変化についていけない(受け入れられない)人々の阻止行動が伴うので、しかたないかもしれませんね。
ちなみに、この仮処分申請よりも漫画家楳図かずお邸「まことちゃんハウス」の赤白塗装に対する申請のほうが100倍は理知的でないでしょうか。何せ、直接の不利益があると考えての申請ですから。
(2)教育現場の教師と講師という観点
◎明石教授
現場の教師に与える悪影響が懸念されます。現状に問題があるなら、まず教師に何ができるか考えるべきです。その積み重ねが十分だったのか。校内研修によって講師の力量を高めたり、地域ボランティアの力を借りたりすることもできたかもしれません。「受験指導は塾に頼もう」と導入したのなら、現場に無力感が広まるだけです。
◎伊藤会長
塾の講師は、生徒を教えるため年間50~100校の高校入試問題を解いており、学校教諭に比べて圧倒的に訓練されています。磨けば光る生徒を、そこそこで高校へ送り出してしまうのは、同じ教師として残念なことです。多忙な小中学校の先生に、あらゆるレベルの成績の子供の成績を伸ばせというのが難しいなら、できない部分は民間に任せるべきです。
◎筆者より
明石教授の言う「教師が何をできるかを考えるべき」というのは、塾が隆盛化してきた30年ほど前に思いつかねばならない発想だったのではないでしょうか。
プロフィールにも書かせていただきましたように、私には中学校での臨教経験があります。赴任先が小規模校であったため、免許外教科の数学を突然担当することになり、授業の空き時間を予習に充てていました。そのとき、先輩の教諭から言われた言葉は今も脳裏に焼き付いています。
「何もそんなに一生懸命にやらなくてもいいんだよ。生徒だって担当する先生さえいればいいんだから。それに、わからなかったら塾で聞くからね。」
20年ほど前のことです……。この言葉が私を私教育へと導いたきっかけです。
学校組織において、授業が分からなかったからといって翌日から学校がなくなるということはありませんが、塾で同様なことがあれば即時倒産です。伊藤会長の言葉通り、塾の講師は自らの指導力を常に鍛えていなければ失職するという危機を日々自覚しながら業務を遂行しています。
学校の教員がさぼっているとまでは言いませんが、指導以外の業務が多すぎて、自らの教務力を高めること自体、今も昔も難しいことに変化はありません。
できないことをできないと認めるのは、大変な勇気がいります。しかし、学校教員の方々にはできないことを認める勇気をだしてほしいものです。「吹きこぼれ」「落ちこぼれ」の対応を私教育に任せたとしても、結果的に生徒のためになるのであればよいのではないでしょうか。
誤解のないように記載しますが、私は塾の講師のほうが有能と言っているわけではありません。塾の講師は単なる教科指導のスペシャリストであって、生徒の総合対応のゼネラリストはやはり学校教員であると思います。生徒指導・生徒管理はどう考えても塾講師より学校教員のほうが勝っています。
サッカーチームが勝利するためには、11人のプレイヤーがFW、MF、DF、GKと役割を分担し、時には足りない部分を補いながら戦うのが当たり前ですね。学校教員と塾講師は、生徒の未来を担う1つのチームと考えてはどうでしょうか。
社会が教育者に求めるのは、この世界の未来を良い方向に導ける人材をどれだけ多く輩出するかということです。過程はどうであれ、結果が伴うのであれば現状の中でよい方法を模索するのは大切です。
学校教員と塾講師がつまらぬプライドを捨てて最善策を考える機会が、この夜スペでないでしょうか。
2008年3月2日付「北海道新聞 対論」に、千葉大学:明石要一教授と全国学習塾協会:伊藤政倫会長の「夜スペ討議」が掲載されていました。お二人のご意見は別掲載でしたので、観点ごとに抽出し、私の意見を添える形で書かせていただきます。
(1)公教育の機会均等という観点において
◎明石教授
授業料が有料である点が問題です。塾で受講するより安く設定されているとはいえ、月謝は数万円します。これでは学習の機会を均等に与えることにならず、学校の中にストレートに格差を持ち込みかねない。
親の年収の差によって学力の差が生じるのは事実です。これを是正することが公教育の使命の一つで、戦後の日本の公教育はこの使命を果たしてきました。今回の試みはこの大原則に反することになります。
◎伊藤会長
和田中の取り組みは、公教育がすべての子供が学力を伸ばすのに限界があるため、塾に協力を求めた一つの事例です。
体育の授業を受けている子供が将来、北島康介選手のようになりたいと思ったら、スイミングスクールに行かなければならない。それは国語や数学などの教科の勉強にも通じます。そうした問題提起を切り込み、生徒と親のニーズに応えたという意味で、和田中の取り組みは評価できるのではないでしょうか。
ただ、教育の機会均等は守られなければなりません。親の経済力で塾に通えない子供には、公的な補助が必要かもしれません。「夜スペ」のように上位層の生徒だけが対象では不公平感が残ります。中下位層の生徒の成績も引き上げられるような取り組みも必要です。
◎筆者より
教育の機会均等には2つの意味があると思います。1つは「すべての生徒に最低限の知識や教養を与える機会をつくること」いわば与える教育です。もう1つは「それぞれの生徒のニーズに応える機会をつくること」つまり応える教育です。
明石教授には申し訳ありませんが、戦後の公教育が果たしてきたのは前者の方のみで、後者を果たすために協力してきたのが私教育でないでしょうか。日本の教育史を省みても、公と私がそれぞれの立場で教育を支えてきた事実は否定できません。
公教育は、元来特権階級のものとして奈良平安時代は「大学寮」、武家中心社会となった鎌倉~江戸時代では「足利学校」を経て江戸幕府直轄の「学問所」、藩が運営した「藩校」という流れで発展してきています。これらは、特権階級の子弟たちに最低限の教養を与える機関でした。
私教育の流れは、江戸時代における「寺子屋」「私塾」が原点で、教育を求める庶民のニーズに応えた形で発祥したものです。
戦後、GHQなどの指導を踏まえた義務教育などがスタートしたわけですが、公教育は「学問所」「藩校」と同じく与える教育のままでないでしょうか。応える教育に対応してきたものこそ「寺子屋」「私塾」の流れをくむ私教育であって、それが「私立学校」「塾」「予備校」などとして細分化されて発展してきたのではないでしょうか。
公教育の立場で意見する方々は、与える教育の形態・内容などが阻害されることを恐れているだけに感じられます。現在の教育制度が、応える教育に対応しきれていない現状を認識してください。
和田中の取り組みは、与える教育と応える教育の一元化のモデルケースでないでしょうか。立場の異なる教育に一つの教場を与えることこそ、今回の試みの最大に評価できる点であると私は考えます。
もちろん、明石教授・伊藤会長の両者が懸念されている「親の経済力による格差」を解決するのが今後の課題です。しかし、伊藤会長のいう公的な補助は、各家庭への金銭的な補助では実現不可能です。学校側が直接塾と契約し、上位層と中下位層それぞれに機会を与えてこそ、公的な補助でないでしょうか。
ただ、この発想の障害になるのが公教育の現場教師の考えです。前回の東京教組のような、反対するために取りまとめられた主観的な意見は、夜スペの今後を語るには全く適していないでしょう。日教組的発想で教育をとらえる限り、国民の理解を得られないことくらい教育者として気づいてほしいものです。
(2)現場への影響に関しては、次回にて。
言うまでもないことですが、とかく公立学校の先生という人種は、塾(私教育)を敵視することを趣味にしています。
その根拠としているのは、『教育基本法第4条』です。法律を読むだけで頭が痛くなる皆さんに(私もですが)、ちょっと読んでもらいましょう。
▲教育の機会均等(4条)
ようするに、公教育側(教員)は、経済的な理由で塾に通える生徒と通えない生徒が存在すること自体許せないということですね。では、3項目のように奨学の措置を塾に通うためにするのかというと、それも違います。3項目は、あくまでも高等学校・大学のように義務教育以外の上位学校に適応されるものです。
つまり、中学生の段階では、中学校へ通学する以外の経済支援はなしで、自由選択の教育である私教育(塾)は存在を認められないということなのでしょう。
確かに、1980年代までは、文科省も私教育の存在を認めていませんでした。しかし、15年ほど前に文科省は学校外教育として塾(補習塾)の存在を認めたのです。
「ゆとり教育」の1つの頂点である現行の学習指導要領は、学力低下の元凶として連続的な非難を浴びてきました。根幹にあったのは「すべての生徒が100点を取れる内容だけを指導に盛り込む。」ということです。
ちょっと待ってください!! て言うことは、120点とか、200点分の知的好奇心のある生徒も100点分に押し込めるということですか? それって可笑しいでしょう!
教育の機会均等は、すべての生徒が教育を受けることができるということであって、受ける内容まで同一とは言ってないはずです。公教育が、知的好奇心を満足させることができる生徒個々への対応ができるなら、百歩譲って認めてもよいですがね……。
逆に、100点を取れないレベルの生徒へ、何かやっているんですか?学力差を縮めて、すべての生徒が達成目標を満たすことこそ教育の機会均等ではないですか!!
“夜スペ”の議論を始めるには、まず私教育の存在を肯定しなくては始まりません。
公教育の場では、学力格差の解消や知的好奇心の充足はできるわけがないのです。それを日教組は認められないのです。だから、別記のような愚かな声明を悪びれずに出せるのですね。
反対のための反対は、支持政党の「日本共産党」ですら止めたことですよ。まずは、私教育(塾)の存在を認めてから、日教組および下部組合は“夜スペ”の是非を議論してほしいものです。
※東京教組の声明文は、「続きを読む」に入れました。読みたくない方々は、読むのをやめましょう。
ゆとり教育による学力低下が懸念されていた公教育の現場において、私教育(塾)との連携によって、学校教育を変えようという試みが企画されました。
塾に頼らざるを得ない公立校が塾の講師やスタイルを取り入れ、学校教育で対応しにくい中上位層への対応の1つの方向性として実施に至ったもの、それが、東京都杉並区立和田中学校(藤原和博校長は民間出身者)にて2008年1月より実施された『夜スペシャル』です。
今回の試みでは、成績中上位者のみを対象に、首都圏大手進学塾「サピックス」との提携で、講師を派遣してもらい、有料(月謝制)で授業を行う形式をとっています。ただし、学校側が運営しているわけではなく、保護者の有志団体による運営形式での開講とし、学校側は会場を貸すのみという立場をとったのです。
しかし、2008年1月初めの実施直前になって東京都教育委員会は「義務教育の機会均等性」や「学校施設の公共性」に疑義を持つという理由から『夜スペシャル』を事実上の中止をするように杉並区教育委員会へ通達をしました。
それから数日後には東京都教育委員会が当初の慎重な考えから一転して、容認する考えを表明し、区も指導内容を検討し、1月26日より実施されることとなったわけです。
公教育と私教育の連携という新たな試みに対し、賛否両論が飛び交う昨今ですが、斬新な試みであることは間違いありません。
ただ、『夜スペシャル』を東京都以外の地域(北海道など)では実施可能かどうか、問題点は多いでしょう。さまざまな意見を検証しつつ、方向性を私なりに考察していきます。