(1)各学年の指導単元の変化
中1に関しては、80年代以降固定されていた「数と式」「関数」「図形」の3領域指導に「資料の活用」が加わり、他学年同様の4領域指導になります。
週当たりの指導時間数が現状通りの中2から「円周角の性質(図形領域)」が中3へと移動します。
中3は単元的には大きな変動はありませんが、有理数と無理数・解の公式・相似と面積比、体積比が高1内容から戻されます(解の公式は、高1でも継続指導の模様)。
(2)指導内容細部変更と問題点
①数と式領域
中1は、1次不等式の指導が復活すること。比例式計算(1)が中2から降りてくることが特色です。中2に関しては、文章題の設定がやや難しくなる以外は変更ありません。
中3は、前述の内容のほかに、平方の形にした二次方程式の解き方(2)が復活します。
基本的には1992年度学習指導要領と同様になるのが今回の改定ですが、一歩踏み出してもよかったのではという疑念もあります。
例えば、不等式の指導を中1のみに限定するのはどんなものでしょう。高1まで3年間のブランクが生じると、生徒の定着率はかなり低くなると予想されます。1980年学習指導要領のように、中2に連立不等式を組み込んで、ブランクを少なくする工夫をしてもよかったのではと感じます。
また、中3の多項式計算では、二次式の展開・因数分解にもっと特化してもよかったのではないでしょうか。(ax+b)(cx+d)型のたすき掛けまで指導しても、高1では三次式計算+中3の反復(スパイラル)を行うので問題はないはずです。むしろ、計算能力の拡張につながった可能性があり、残念に感じます。
解の公式に関しては、単なる暗記になるような記載がされているのが懸念です。平方形による解法を一歩踏み込んで、公式の導き方まで指導すべきではないでしょうか。
②関数領域
各学年とも全くと言ってよいほど現状通りです。中3において、図形領域との融合問題や反比例・一次関数・二次関数の融合問題などを指導するすることを明記してほしかった気がします(教科書会社の取り組みがみもの)。
③図形領域
中1では、円錐・角錐・球の表面積と体積の求め方が復活しますが、「求めること」としか指導要領に記載されていないので、おそらく公式のみでしょう。
中3に「円周角の性質」が上がったのは、合同よりも相似と抱き合わせたほうが指導しやすいというだけのことで、深みはありません。というのは「円の位置関係」「内接四角形の性質」(3)「接弦定理」(4)などの2002年度改定で高1に移動した内容が降りてこないからです。
円に関しては、分断して扱うよりも総合的に扱った方が指導効果が上がるはずです。内容的に平易な「内接四角形の性質」くらいは、扱っても問題なかったのではないでしょうか。余談ですが、ジブリ映画「耳をすませば」中の月島雫が受けていた授業(5)に整合性を復活させて欲しかった……。
④資料の活用
中2の確率は現状のまま、これはよしとします。問題を感じるのは、92年度改定で1単元化されていた「資料の整理」を中1と中3へ分割することです。
中1では平均値・中央値・相対度数・階級などの、標本整理の基本事項のほかに、誤差と近似値・a×10のn乗という、高校理科での重要度が高い内容が新たに扱われます。
中3は母集団と標本調査の関係という軽い扱いですので、前述の誤差と近似値・a×10のn乗を中3で扱い、標本関係を中1に統合した方がよかったのではないでしょうか。高校理科での関連を考慮するなら、近似値関係は中3のほうが妥当でしょう。
私的には、「中1:確率→中2:資料の整理→中3:近似値」のほうがすっきりします。確率が今のままの指導内容であれば、中1生でも理解可能と思われます。
総じて言えるのは、あくまでも1992年度内容へ戻すことを主眼としている改定にすぎないということです。総合学習の時間を削って、中2も週4時間にしてもよかったのではないでしょうか。その分で、「円の性質」の指導を厚くできたことでしょう。
確かに「円の性質」は難解な単元の1つですが、逆に言えば数学的思考能力を鍛えるには最適な単元であるともいえます。その定着が図れれば、数学能力のアップにつながると考えてもよいのではないでしょうか。
※脚注(1)~(5)の解説は“続きを読む”に掲載してあります。

