(1)中学校数学
①中1
◎2009年度…数の集合と四則計算の可能性、文字を用いた式による表現や読み取り、不等式、平行移動・対称移動・回転移動、球の表面積と体積、関数関係の意味、資料の散らばりと代表値
※週時間数を3時間から4時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…新規追加事項はなく、2009年度内容の継続
②中2
◎2009年度…円周角と中心角の関係を削除(中3へ移行)、先行実施はなし。
※週時間数は3時間と変更なし(2010年度以降同じ)
◎2010年度…先行実施はなし。
③中3
◎2009年度…先行実施はなし。(週時間数も変更なし)
◎2010年度…解の公式を用いた二次方程式の解法、有理数・無理数、相似な図形の面積比と体積比、円周角と中心角の関係、いろいろな事象と関数、標本調査
※週時間数を3時間から4時間へ(2011年度以降同じ)
(2)中学校理科
①中1
◎2009年度…力とばねの伸び、重さと質量の違い、水圧・浮力(アルキメデスの原理は含まず)、粒子のモデルとその運動、種子を作らない植物の仲間、断層
※週時間数は3時間と変更なし(2010年度以降同じ)
◎2010~2011年度…新規追加事項はなく、2009年度内容の継続
②中2
◎2009年度…先行実施はなし。(週時間数も変更なし)
◎2010~2011年度…電流が電子の流れであること、電力量、熱量、直流と交流の違い、酸化と還元(中3より移行)、化学変化と熱、生物と細胞、無脊椎動物の仲間、生物の変遷と進化、日本の天気の特徴、地球の大きさや大気の厚さ
※週時間数を3時間から4時間へ(2011年度以降同じ)
③中3
◎2009~2010年度…力学的エネルギー、水溶液とイオン、電子と原子核、陽子・中性子、イオン式、遺伝の規則性と遺伝子・DNA、月の運動と見え方
※週時間数は2.3時間から3時間へ(2010年度まで)
◎2011年度…力のつり合い、力学的エネルギーの保存、化学変化と電池、酸・アルカリとイオン、熱の伝わり方、エネルギー変換効率、放射線の性質と利用、自然環境の保全と科学技術の利用、地球規模でのプレートの動き
※週時間数を3時間から4時間へ(2012年度以降同じ)
→理科の移行措置が新学習指導要領完全実施の2011年度にまたがるのは、教科書の構成上(第1分野上下、第2分野上下の4冊)、中3での新規教科書配布がないためである。
以上のような流れで移行措置は進んでいきます。新聞報道では、2009年度より中3理科「物質とイオン」が完全実施であるかのように告知されていますが、実際は前半の「水溶液とイオン」が先行し、2011年度より「化学電池」「酸・アルカリと中和」が追加される流れになっています。
この段階的な実施の背景は、中3理科の週当たりの時間数を2.3時間から4時間へと大幅アップさせることを段階的に実施することが理由のようです。
新学習指導要領が2011年より正式に実施される事に伴い、以下の内容が2009年度より随時導入されていきます。数学(算数)・理科に絞ってその追加内容をご紹介していきます。(削除事項は2002年度実施とは異なり、ありません)
(1)小学校算数
①小1
◎2009年度…簡単な3位数、簡単な2位数の加法と減法、面積と体積の比較、時刻の読み方
※週時間数を3.4時間から4時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…個数を絵や図などで表わす
②小2
◎2009年度…簡単な3位数の加法と減法、時間の単位、正方形・長方形・直角三角形、箱の形
※週時間数を4.4時間から5時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…簡単な分数、体積の単位(l,ml,dl)と測定
③小3
◎2009年度…4位数の加法と減法、3位数に2位数をかける乗法、重さの単位 t (トン)、二等辺三角形・正三角形・角・円と球
※週時間数を4.3時間から5時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…除数が1位数で商が2位数の除法、小数の意味や表し方、10分の1の位までの加法と減法、分数の意味と表わし方、簡単な分数の加法と減法、□や△などを用いた式
④小4
◎2009年度…四則計算の結果の見積もり、小数と整数の乗法と除法、そろばん(加法と減法)、直線の垂直と平行、平行四辺形・ひし形・台形、立方体・直方体、直線や平面の垂直と平行
※週時間数を4.3時間から5時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…大きさの等しい分数、同じ分母の分数の加法と減法、四則計算の性質(小数など)
⑤小5
◎2009年度…同じ分母の分数の加法と減法、ひし形・台形の面積、多角形、図形の合同
※週時間数を4.3時間から5時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…約数・倍数・最大公約数・最小公倍数、異なる分母の分数の加法と減法、分数と整数の乗法と除法、体積の単位(立方cm・立方m)、立方体や直方体の体積、角柱や円柱、見取り図と展開図
⑥小6
◎2009年度…異なる分母の分数の加法と減法、メートル法の仕組み、拡大図と縮図、文字を用いた式(a,xなど)
※週時間数を4.3時間から5時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…起こりうる場合(確率)
(2)小学校理科
①小3
◎2009年度…身近な自然の観察、物と重さ、風やゴムの働き
※週時間数を2時間から2.6時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…2009年度に同じ
②小4
◎2009年度…人の体のつくりと運動、水の三態変化、天気による1日の気温の変化
※週時間数を2.6時間から3時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…2009年度に同じ
③小5
◎2009年度…水中の小さな生物、鉄心の磁化、電磁石の強さ
※週時間数を2.7時間から3時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…川の上流・下流と河原の石
⑥小6
◎2009年度…おもな臓器の存在、食べ物による生物の関係、電気による発熱、火山や地震による土地の変化、月の形と太陽の位置、月の表面の様子
※週時間数を2.7時間から3時間へ(2010年度以降同じ)
◎2010年度…てこのつり合いと重さ・規則性、発電と蓄電、電気の変換、電気の利用
(3)その他特記事項
①英語…2009~2010年度の導入に関しては、各学校の判断にゆだねる。
②社会…47都道府県の名称と位置を覚えることを追加する。
③ 週当たりの全指導時間数をすべての学年で1時間増やす。
●筆者注)それだけでは、算数・理科の時間増に対応できないため、総合学習の時間を削減して当てていく。
2011年度より、小学5~6年において外国語(英語)指導が必修となります。また、中学での英語の指導時間数も主要5教科中最高時間数となり、文科省がいかに英語教育に力点を置いているかがわかる改定となっています。
しかし、この方針は正しいといえるのでしょうか?小学生・中学生の指導目標や時間数をからめて考察してみます。
(1)小学生の英語指導
①指導時間
●小5、6共通……週当たり1時間(年間35時間)
②指導目標
外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。
③概要
コミュニケーション能力を重視し、主に音声的な指導を行う。CD・DVDなどの視聴覚教材を積極的に活用する。アルファベットなどの文字や単語の取り扱いは、音声によるコミュニケーションの補助的に用いる。
ようするに、小学生段階では、あいさつ・外国の行事などを通じて英語の発音に慣れることが第1目標で、代表的な慣用表現を少々学習する程度ということでしょう。
また、新聞報道によると小学生英語教材のたたき台が教科書出版社から提示され、驚くことにアルファベットの履修は小6からとなっていました。
小学生の英語指導は単なる会話が少々できるようになればよいということなのでしょうか。その程度なら、わざわざ学校教育で扱うほどのことでしょうか。言語の基本をもっと学ばせる方向性が欠けているような気がしてなりません。
言語教育は会話ができることだけではなく、文字情報を読み取ることも重要です。国語科において小1は文字を学習せずに会話だけをやっていますか、そんなことはないですよね。小1から仮名文字・一部の漢字を学習して、文字情報を読み取ることも指導しているはずです。
英語教育もその両面が必要なのは間違いありません。それにも関わらず、会話のみに特化した指導をするのはいかがなものでしょうか。単に、中学への先送りを想定しすぎです。
そういえば、20年以上前はローマ字という形でアルファベットを小4で履修していたはず。これは、明らかな後退といってよいでしょう。中学において、他教科への弊害が生じないように小学生の英語指導は週2時間で、文字情報教育も取り入れるのが妥当ではないでしょうか。
(4)第2分野各単元における配列変更と追加
①生物領域
②地学領域
第1分野の充実に比べ、第2分野の改定はお粗末な内容じゃないですか。指導内容の追加が、明らかに生物に偏っています。92年度指導要領にあった大地の変化における「地殻変動(褶曲・整合・不整合)」は復活せず、天体の「銀河系」も取り扱われません。地学軽視といってよいでしょう。生物領域に新規内容を取りこんだのはわかりますが、DNAなどは高校理科「生物」で詳細に扱ってもよいのではないでしょうか。
(5)まとめとして
授業時間数が現状と変わらない中1においても学習内容が増加しています。中2・中3は92年度指導要領レベルにもどったと言えますので、時間数的にその当時並の指導はできるでしょう。
しかし、理科教育の抱える大きな問題を解決するのは難しいです。この盛りだくさんの内容を指導するだけで、公教育・私教育とも消化不良を起こす可能性はあります。
公教育では「実験・観察」の実習授業の省略に拍車がかかると予想されます。塾などの私教育では、内容増による指導のコンパクト化が進み、結局のところ理科の学力を伸ばすまで行かないでしょう。
公教育が「実験・観察」を省略すればするほど知識の詰め込み授業に成り下がり、理科的な思考力を身につけることは困難になります。その原因はやはり時間数でしょう。おそらく、最も「実験・観察」に取り組む学年である中1が厳しくなります。
やはり、全学年とも週4時間ないとこなすのは難しいといってよいのではないですか。今回の改定では、週の授業時間を29時間と設定しているので、あと1時間は増やせたのではないでしょうか。また、必要以上に英語に時間を与えているのも、どんなものでしょう。バランスを考え直してほしいですね。
ちなみに、塾においては数学と同等の時間数で指導しないと、間違いなく理科の指導は崩壊するでしょう。
学習指導要領が改訂されるたび、最も翻弄されているのは理科かもしれません。文科省の方針は玉虫色なため、その時代ごとに変化しすぎで統一感がないように思えます。今回の改定は、一つのガイドラインとなるのでしょうか?
(1)週当たりの指導時間数の変化
過去20年分の経緯をみると、今回の改定における理科の指導時間数が1番多くなっています。3年間トータルの指導時間数も数学と同じになりました。理科軽視の傾向が顕著だった2002年学習指導要領(中3の少なさは論外!)からみると、約14%の時間増であるといえます。
(2)学年別指導単元の問題点
①指導領域の順序
92年指導要領までは、全学年とも第1分野が「化学領域→物理領域」、第2分野が「生物領域→地学領域」の順で学習していました。しかし、2002年度改定において、第1分野が「物理領域→化学領域」とされ、教育現場で混乱が生じていました。
その理由は、数学において「数と式」を学ぶ時期に物理領域を学習するため、方程式の知識が乏しい段階(特に中1)での計算問題を指導しにくかったためです。
今回の改定においては、領域の学習順序は学年内の4領域の指導順に柔軟性を持たせています。対応は教科書会社任せになりますが、第1分野を「化学領域→物理領域」と編集する会社もあることでしょう。
②地学領域の単元配列
残念ながら、2002年度改定によって生じた中1大地と中3天体の指導順変更(92年度学習指導要領までは、中1が天体・中3が大地)は解消されませんでした。現在の配列を維持した現状では次の問題点が生じます。
地学領域は、高校理科「地学」の選択率の低さから、中学までの指導内容が知識として定着するケースが大きい領域です。しかし、この学習順では成人した時の地学領域の知識の希薄化を招きやすくなります。
文科省は、次回の改定においてこのねじれ現象を解消すべきでないでしょうか。
(3)第1分野各単元における配列変更と追加
①化学領域
②物理領域
③物質とイオンの取り扱い
基本的に、1992年度指導内容に準じた形での復活となります。「電解質と非電解質→原子の成り立ちとイオン→化学変化と電流→酸とアルカリ→中和と塩」の配列順も変更はありません。
特筆すべきは、高校理科「化学」へのつなぎ単元であることが若干強化されたことです。具体的に申し上げると次の点です。
●原子の成り立ち:80、92年度学習指導要領では「原子核と電子」のみにとどめていた記載事項を「原子核は陽子と中性子から構成されること」までと変更。
●イオン記号:92年度学習指導要領でみられた1価単原子イオン(含水酸化物イオン)のみとした制限が記載されていない。よって、2価以上の原子団イオンも触れるとみられる。
●電池:金属イオンのイオン化傾向に関して記載なし。触れる方が自然であろう。また、ボルタの電池だけでなく日常生活で活用されるものも触れることとなっている。鉛蓄電池の扱いは不明。
●中和:pHに触れることが明記される。また、難溶性の塩にも触れるため、必然的に2価金属イオンも学習することになる。
以上のことから、過去20年間で最も内容が濃くなるといってよいでしょう。この点は大いに評価できます。ただ、塩化銅の電気分解→原子の成り立ちとイオンの流れで指導していった場合、遷移元素の銅イオンをどう取り扱うのかは疑問です(原子の構造を説明しにくい)。意外に、塩化銅ではなく塩酸に置き換わる可能性もあります。
(第2分野と総括は後編にて)
(1)各学年の指導単元の変化
中1に関しては、80年代以降固定されていた「数と式」「関数」「図形」の3領域指導に「資料の活用」が加わり、他学年同様の4領域指導になります。
週当たりの指導時間数が現状通りの中2から「円周角の性質(図形領域)」が中3へと移動します。
中3は単元的には大きな変動はありませんが、有理数と無理数・解の公式・相似と面積比、体積比が高1内容から戻されます(解の公式は、高1でも継続指導の模様)。
(2)指導内容細部変更と問題点
①数と式領域
中1は、1次不等式の指導が復活すること。比例式計算(1)が中2から降りてくることが特色です。中2に関しては、文章題の設定がやや難しくなる以外は変更ありません。
中3は、前述の内容のほかに、平方の形にした二次方程式の解き方(2)が復活します。
基本的には1992年度学習指導要領と同様になるのが今回の改定ですが、一歩踏み出してもよかったのではという疑念もあります。
例えば、不等式の指導を中1のみに限定するのはどんなものでしょう。高1まで3年間のブランクが生じると、生徒の定着率はかなり低くなると予想されます。1980年学習指導要領のように、中2に連立不等式を組み込んで、ブランクを少なくする工夫をしてもよかったのではと感じます。
また、中3の多項式計算では、二次式の展開・因数分解にもっと特化してもよかったのではないでしょうか。(ax+b)(cx+d)型のたすき掛けまで指導しても、高1では三次式計算+中3の反復(スパイラル)を行うので問題はないはずです。むしろ、計算能力の拡張につながった可能性があり、残念に感じます。
解の公式に関しては、単なる暗記になるような記載がされているのが懸念です。平方形による解法を一歩踏み込んで、公式の導き方まで指導すべきではないでしょうか。
②関数領域
各学年とも全くと言ってよいほど現状通りです。中3において、図形領域との融合問題や反比例・一次関数・二次関数の融合問題などを指導するすることを明記してほしかった気がします(教科書会社の取り組みがみもの)。
③図形領域
中1では、円錐・角錐・球の表面積と体積の求め方が復活しますが、「求めること」としか指導要領に記載されていないので、おそらく公式のみでしょう。
中3に「円周角の性質」が上がったのは、合同よりも相似と抱き合わせたほうが指導しやすいというだけのことで、深みはありません。というのは「円の位置関係」「内接四角形の性質」(3)「接弦定理」(4)などの2002年度改定で高1に移動した内容が降りてこないからです。
円に関しては、分断して扱うよりも総合的に扱った方が指導効果が上がるはずです。内容的に平易な「内接四角形の性質」くらいは、扱っても問題なかったのではないでしょうか。余談ですが、ジブリ映画「耳をすませば」中の月島雫が受けていた授業(5)に整合性を復活させて欲しかった……。
④資料の活用
中2の確率は現状のまま、これはよしとします。問題を感じるのは、92年度改定で1単元化されていた「資料の整理」を中1と中3へ分割することです。
中1では平均値・中央値・相対度数・階級などの、標本整理の基本事項のほかに、誤差と近似値・a×10のn乗という、高校理科での重要度が高い内容が新たに扱われます。
中3は母集団と標本調査の関係という軽い扱いですので、前述の誤差と近似値・a×10のn乗を中3で扱い、標本関係を中1に統合した方がよかったのではないでしょうか。高校理科での関連を考慮するなら、近似値関係は中3のほうが妥当でしょう。
私的には、「中1:確率→中2:資料の整理→中3:近似値」のほうがすっきりします。確率が今のままの指導内容であれば、中1生でも理解可能と思われます。
総じて言えるのは、あくまでも1992年度内容へ戻すことを主眼としている改定にすぎないということです。総合学習の時間を削って、中2も週4時間にしてもよかったのではないでしょうか。その分で、「円の性質」の指導を厚くできたことでしょう。
確かに「円の性質」は難解な単元の1つですが、逆に言えば数学的思考能力を鍛えるには最適な単元であるともいえます。その定着が図れれば、数学能力のアップにつながると考えてもよいのではないでしょうか。
※脚注(1)~(5)の解説は“続きを読む”に掲載してあります。
【お願い】
記載事項の重複を極力避けますので、今回からの内容に入る前に、初回(2月20日付)の指導時間数・指導内容の追加・復活をお読みになって頂けたら幸いです。
小学校算数での追加・復活内容に関しては、次の点が注目です。
●小学4年…複雑な計算の必要な際に用いられていた『電卓を適宣用いる』という項目を全面的に削除。すべて筆算で行うことを促して計算力を高める(小5・6も同様)。
●小学5年…台形、ひし形の面積公式の復活。円周率は「3.14」を用いることを明記。
●小学6年…角柱や円柱の体積公式の復活。
これらの内容改定は、ハッキリ言って目新しいものはありません。単に1992年学習指導要領の内容に戻しただけです。これは、中学生でも同様です。文科省の意図するところが何なのかがわかりにくい改定です。
日本の算数・数学能力のピークが1992~2001年であったと考える方は、ほぼいないでしょう。それにもかかわらず92年スタイルに戻したのには、学校週5日制を維持した時間数の中で取り入れられる内容の限界がここであったということでないでしょうか。
まあ、電卓廃止に関しては、当然といえば当然です。複雑な小数計算も筆算を用いるようにしていただくのは、思考力アップにつながりますので問題ないでしょう。
また、2002年度学習指導要領で明記されていた、小数計算の桁制限の記載がなくなりましたので、小数第○位までということにこだわらずに扱えるようになるのは歓迎です。
図形に関しては、中学数学でも同じ問題点を指摘しますが、公式というものは「何故その関係を導けるか」を徹底指導しなければ、単なる暗記ものに成り下がってしまいます。
例えば、台形の面積公式が削除された2002年度改定の際、三角形2分割によって面積を求める方法を導いたことを昇華させ、公式の導入方法を指導することが盛り込まれていなければ、まったく意味をなさない改定になってしまいます。
そのような導入指導がなされているか、一応、考え方から学ぶとは指導要領に記載されてはいますが、各教科書会社の取り組み方には差が出るところでしょう。ただ、公式を覚えるのではなく、導く思考力を育むことが指導される事を祈っています。
→台形、ひし形の面積公式が何故成立するかを忘れた方は、「続きを読む」をご覧ください。
今回は、各塾の塾継続生の占有比率が高い中学生を例に、お話していきます。
2002年度指導要領と1992年指導要領を比較した際、特に数学・理科での変更(削除事項)が多かったことが特色でした。5教科全体でも、およそ3割の内容が削減された形です。
ところで、削減事項と表現した内容には、「完全な削減」「高等学校への先送り」の2つが混在していました。「高等学校への先送り」の内容でも、理科の地学分野の場合は高校での履修率からみると「完全な削減」と判断するのが妥当です。
そういった2系統の削減事項を、多くの塾は継続授業であたかもすべて扱うかのように、2002~2003年にかけて広告宣伝するのですが、不完全燃焼でその試みは終了するのです。その理由は、次の3点にまとめられます。
(1)継続授業の時間数が、少なすぎるため。
『道内学習塾の生き残り戦争』でも記載しているように、北海道の大手塾は、週当たり6時間程度しか継続授業をしていません。大まかに言うと、英語・数学が各100分、理科が30~50分、社会が20~50分、国語が0~30分です。
数学の削減事項の授業での反映度が大きいのは中3です。中3の場合は、受験指導も継続授業に取り入れねばならない側面があるため、削減事項を多量に取り入れることはできません。
理科の場合は、もともと各塾とも指導時間を少なく割り振っていますから、削減事項のおかげで少々まともな授業ができるようになったレベルです。中学での週当たりの指導時間が最も少ないのは中3ですから、数学同様に受験指導で時間をとってお仕舞です。中1・2は1992年指導要領と週時間数が同じですから、取り込む余裕はありません。
(2)取り込みにくい単元が多数あった
数学の中3「二次方程式の解の公式」程度なら、指導はしていました。しかし、「円に内接する四角形」「接弦定理」となると、結局は高等学校の数Aで詳しく扱います。中2でやっても意味がなかったのです。中3「相似と面積比・体積比」になると受験前単元ですから、扱うことはほぼ不可能でした。
その他、数学で塾が対応したのは「方程式の利用」の思考問題を多めにしたくらいです。
理科はと言いますと、1992年指導要領から指導学年変更となった「大地(中3→中1)」「天体(中1→中3)」が大きなネックになりました。「大地」の地震では、数学中3「三平方の定理」を利用した問題を指導できなくなったのです。
また、単位系が国際単位系(SI)表記に変更されたことも、現場講師の混乱を招き、不十分な対応になったようです。
なお、中学から高校への最も重要なつなぎ単元である「物質とイオン」は、その量的な問題もあり、塾継続授業に取り入れた塾は皆無に等しい状態でした。
(3)2003年12月の指導要領見直しで、方向性を失った
前回も書いたように、学習指導要領の上限規定が2003年12月に削除され、公教育でも発展的な内容として扱えるようになりました。塾で指導する意味はなくなったのです。
今振り返ってみると、社会的に「2002年問題」と大げさに叫ばれた2002年度指導要領は、単に塾の募集活動に利用されただけだったのではないでしょうか。真摯に対応した塾はごく僅かであったことがそれを物語っています。
今回の改定を良いきっかけとして塾システムを構築する真面目な北海道の塾があるなら、次のことをやってもらいたいものです(以降、続きを読むに掲載)。
2008年3月5日のことです。寝ぼけ眼で北海道新聞に目を通した時、日ハムファンの私の目に飛び込んできたのは「田中賢介選手弩アップ写真広告」でした。
何の広告かと思えば、練成会グループの受験広告です。「また、恒例行事か。」と流し読みしていた時にふと、目に留まったのは次の見出しでした。
“脱ゆとりへ転換 …… 練成会グループの提言は、間違っていなかった。”
記事の詳細な内容を、ここで記載するつもりはありませんが、ようするに「練成会グループが公教育に対して、警鐘を鳴らし続けたから指導要領は改定された。」という主旨と、私は受け止めました。
練成会グループの例に限らず、現行のゆとり極大の学習指導要領は、各塾のネガティブキャンペーンへと利用されてきました。いい例が下記に記載する『円周率は3?』問題です。
▲概要
2002年度施行の現指導要領において、「小学校における乗法(掛け算)の指導については小数第一位まで扱えばよくなった。」ため、小数第二位まで表記されていた円周率3.14は「およそ3」としか扱えないと解釈された。
現学習指導要領の施行時に「過不足なく教えなければいけない」という上限規定が存在していたため(2003年12月に削除)、3.14という数を掛けることは学習指導要領の上限規定に反するという理由を根拠に、練成会グループ(個別塾に3.14と名をつけるくらい)を含めた多くの塾が宣伝に利用した。
▲背景とその真偽
2002年度施行の小学校学習指導要領第2章 第3節「算数」、第5学年の「3 内容の取扱い」で、「……、円周率としては3.14を用いるが、目的に応じて3を用いて処理できるよう配慮するものとする。」と記載され、「必ず3を使わねばならない」とは書かれていない。また、「目的に応じて3を用いて処理できるよう配慮するものとする」という記述は、1992年度施行の学習指導要領にすでに盛り込まれていた内容であるので、2002年度学習指導要領が諸悪の根源のように指摘する塾業界の姿勢は、事実を歪曲した告知活動といえる。
▲公教育現場の対応など
2002年度施行の学習指導要領に基づいた「小学5年生算数の教科書」は、各教科書出版社とも『円周率は3.14』と明記されていた。また小数第二位を含む計算に関して、円に関する単元では、教科書の中では『計算機を使用する』こととされているため、3を使って計算する必要性はなかった。
「学力低下」に拍車をかける改定として、現指導要領を問題視したのは、塾業界だけではありません。むしろ、有識者・実際の公教育の現場からの声が、2011年度施行の新学習指導要領の内容改定に大きく影響を与えたと判断すべきでしょう。
もし、2002年学習指導要領を塾業界が本気で問題視してたなら、塾の指導はもっと大きく変革していたはずです。しかし、「当塾は、発展的な内容も指導します。」と宣伝した多くの塾は、それほど大したことはせず(と言うよりできなかった)、旧来通りの塾指導を継続していたのです。(詳細は次項へ続く)
数学・理科・英語に限らず、主要教科(国語・社会)すべてが、指導時間増となりました。では、実際に授業を受ける生徒たちへの時間的影響はどうなるのでしょう?中学生を例に考えていきます。
◎中学の時間数の変化(週当たり)
(1)指導時間が変わらない教科…音楽、美術、技術・家庭
(2)指導時間増となる教科…保健体育
(3)その他…選択教科は廃止、総合学習は減少。
1年間(35週)での学習時間は、計1015時間(全学年とも)です。1週に直すと29時間ですから、週5日のうち4日間は6時間授業、1日だけ5時間授業という計算になります。
ちなみに、現行は28時間です。ということは、「たかが1時間しか授業は増えない。」ということが現実です。こんなことで「ゆとり教育」から脱却できるのでしょうか? 問題点を次のようにまとめてみました。
◎時間数からみた各教科の問題点(中学校)
(1)全学年とも時間増となったのは英語のみ(週3→4時間)。数・理は、週3時間のままの学年が存在している。
→国際社会への対応力をつけるために英語教育に重点を置く、といえば聞こえはいいですが、ますます間違った方向へと進んでいる気がします。詳細は、別項目にて。数理は、時間数が増加した分、指導内容も比例して増えるため、単なる詰め込みの増加になる危険性があります。
(2)国語の指導時間が、中2のみで増加。中3の週3時間は現状維持。
→英語の時間増に対し、国語を軽視しすぎに思われます。語学教科の問題点は、別項目にて。
(3)総合学習が週当たり1.4~2時間と、思ったほど削減されていない。
→巷の予想では、週1時間にして他教科に振り分けを大きくすると考えられていた。その分が、国語・社会の時間数に影響しています。
私の考えとしては、国語の時間数が少ないことが気がかりですし、理科の時間数はもっと増やさないと理科嫌いの増長につながる改定では?という疑念が消えません。
かねてから悪評が高かった現在の学習指導要領がようやく改訂される運びになりました。「ゆとり教育」による学力低下を招いた元凶とされた旧学習指導要領がどう変わるのか。まずは、報道内容の確認からいたしましょう。
文部科学省は15日、教育課程の基準となる小中学校の新しい学習指導要領案と幼稚園の教育要領案を公表した。前回1998年度改定の指導要領で掲げた「生きる力」の理念を継承。小中学校の算数・数学、理科を中心に前回削除した単元を復活させるなど指導内容を増やすとともに観察・実験を充実させ、知識の習得と活用力の育成を図る。授業時間数は小中学校とも30年ぶりに増やし「ゆとり教育」から転換。一昨年の教育基本法改正後の改定で、伝統や文化に関する内容を盛り込み、道徳教育も充実させる。
中央教育審議会(中教審)の答申に沿ってまとめた。改定の柱は《1》理数教科の充実《2》伝統と文化の尊重《3》外国語強化《4》道徳教育の充実-など。授業時間数は小学校低学年が週2時間、小学校中学年、高学年と中学は週1時間増やす。
算数・数学は台形の面積など前回改定で削除した内容を復活し、複数の学年で同じ内容を反復して指導する。「目的に応じ3を用いて処理できる」とした小五の円周率の記述も削り、「3・14」を復活した。理科は思考力・表現力を養うため観察・実験で考察を促す。小中の合計時間で算数・数学が約15%、理科が約23%増える。
改正教育基本法で明記された「伝統と文化の尊重」は各教科に反映。中学音楽では唱歌を復活させ、中学保健体育では男女ともに武道を必修化。国語は小学校でことわざや故事成語、中学では古文・漢文の音読など古典に力を入れる。
知的活動やコミュニケーションの基盤となる言語活動は、国語だけでなく各教科で重視。
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英語は小学校高学年で初めて必修化。中学英語で扱う英単語は約900語から約1200語に増やす。前回改定で導入された「総合的な学習の時間」は小中とも時間を3割程度減らす。
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新指導要領の完全実施は幼稚園が2009年度、小学校が2011年度、中学が2012年度。小中の理数科目は内容が大幅に増えるため、文科省は2009年度から授業時間数を増やし、補助教材の作成も検討する。同省は「学習内容の増加分は、理数教科で授業時間増の7~8割程度に抑えているのでゆとりはなくならない」と説明している。
出典:『北海道新聞』2008年2月16日付
各教科別に検証すると、次のようになります。
(1)理数教科の充実の概要
①授業時間数の変更
②指導内容の追加・復活(1997年度以前の内容)
(2)履修英単語数の変遷
※他教科もいろいろな改定がありますが、数理、英語の3教科に絞って検証してみました。