今回と次回は、羊蹄学園大学社会学部講義集のコメント欄で予告した内容も兼ねてお話しさせていただきます。
塾指導の1つの理想形を構築しているその塾は、たびたび記載させていただいている『志学会(北見)』のことです。
さて、志学会とはどんな塾なのでしょう。3.5章でふれた内容から一歩踏み込んでお話しします。ついでに、R会とのかかわりもふれておきましょう。
志学会代表の田巻氏は、北見北斗高校出身・北海道大学卒。自らを育んでくれた地域に教育を通じて貢献することを目的として、1993年に志学会を開塾しました。
田巻氏の塾人としての人なりは、非常に真摯かつ創造的です。子供たちに対する温かい思いを塾という形で創造したというのが当てはまるでしょう。
3~3.5章でも記載しましたように、志学会を開塾するまではR会グループ企業(株)Rの社長兼北見R会塾長として、大手塾の中枢を支えていたわけですが、ご本人の方向性とR会グループ会長の奥山氏とは教育に対するスタンスが大きく異なり、袂を分かつことになるわけです。
相棒のA君は、田巻氏が北見R会塾長の頃、2年間部下として勤務したことがありました。あるとき、こんなやりとりがA君との間にあったそうです。
北見で初めての夏期講習の募集の時期、他地区のR会から転勤してきたA君は、講習生を紹介してくれた塾継続生に対するお礼の品が、何人紹介しようともファイルノート1冊しかあげないことに不満を持ちました。
「他地区では、紹介人数に応じて図書券も含めて多大なお礼をしているではないですか。こんなことでは、集客は厳しいんじゃないですか。」
その問いに対し、田巻氏は、
「金品を貰えることを当てにして、子供たちに営業活動をさせることは教育に携わる者として正しいことじゃないだろう。友人紹介制度は、あくまでも共に競い合い、信頼して学ぶ友人を塾生から自発的に推薦してもらうための制度であることを、遵守したいんだ。だから、心からの感謝として勉強に役立つようにファイルノートをお礼にしているんだよ。」
と答えてくれたそうです。
A君は、今までの営業一辺倒の姿勢を大いに反省し、授業力で生徒を集めることが第1と心を入れ替えたそうです……。
もちろん、志学会においても過度な集客のための金品ばらまき策はせず、初心を貫いているそうです。生徒を営業マン化して、貧しい心を育てるS英・HZ会・R会の大手3塾には真似できないことでしょう。
A君曰く、
「田巻氏は、R会が最も攻撃的になってきた時期に社長に就任したことが悲劇だった。」
と語ってます。
函館や苫小牧といったR会にとって未知な道南地域への開校を促進したい奥山氏に対し、内部を固めて塾としての基礎体力を構築することを切望していた田巻氏との溝はじょじょに深まっていきました。
奥山氏は、自分の思い通りにならない田巻氏を切り捨て、自らが育て登用した帯広の塾長H氏(次期副社長)と会社の方針を相談するようになっていきます。
そうして、田巻氏は、自らの理想とする塾を創設したいという思いが強くなり、R会を辞して「志学会」を創設することになるのです。
田巻氏が去った後のR会は、15年たっても満足な自社教材やシステムを構築できていないことは2章や4章で述べた通りです。あのとき、田巻氏がR会にいることを選択したなら、R会もすこしはまともな塾になっていたかもしれません。
しかし、田巻氏が志学会を設立したことは、R会にとって、運営方針を転換する機会になったのは事実です。
志学会がR会と差別化するために行ったこと。大きく分けて4点あります。
1.田巻氏の目の届かない分校教室展開をやめ、1教場主義を貫いたこと。
2.講師をすべて社員とし、アルバイト講師を廃したこと。
3.指導学年を小1~高3とし、小5~中3までだったR会との違いを際立たせたこと。
4.個々の生徒に対して、納得のいくまでの徹底指導を実践したこと。
このうち、2・3に関しては、R会も対抗上取り入れていきます(1に関しては、全道展開する以上、採択は不可能)。
R会の社員講師率が、ここ5年間で急速に高まったのは、社員講師のみで指導する塾が強力なライバルとして君臨してきたからにほかなりません(昨今のR会は、たいしてHZ会をライバル視していない証拠の1つ)。
R会の社員講師率が高い地域としては、岩見沢・旭川・北見の3都市を上げることができます。
このうち、岩見沢に関してはアルバイト講師の確保が難しいという地域事情を反映したものです。
岩見沢市にある大学は、北海道教育大学岩見沢校1校のみで、ご存知のように、教育大再構築の過程で芸能体育課程教員の養成校へと変貌しました。
つまり、塾の指導に耐えうるレベルの大学生を確保することができないのです。
旭川と北見は、社員体制のライバル塾へ対抗するためのシフトです。北見の志学会に加え、旭川にはS英予備校が2年前に開校しています。アルバイト中心の体制では、この2塾とは戦えない。それが企業としての判断でした。
実際のところ、これらの2地区には、それぞれ30~40名もの社員が配属されています。おそらく、北見地区での志学会の台頭がなければ、未だにアルバイト主体の講師体制だったでしょう。
現に、独占的な牙城でもある帯広地区はまだまだアルバイト講師が多いといいますし、ライバル塾がS英だけではない札幌地区も社員比率はそれほど高くないようです(理由はほかにもありますが、別項にて)。
3の指導学年の広域化は、T進衛星予備校・四谷大塚NETとの提携によって達成しています。しかし、これらの提携は、もともと志学会が先んじて実施していたことです。
R会がいかに志学会を恐れているか、その方針転換から類推できます。しかし、最も塾として重要な4に対しては、ほとんど対応できていません。というよりも対応はできないでしょう。
志学会が「わかるまで、できるまで」という姿勢を実践するために取り入れたシステムこそ、集団指導と個別指導の融合なのです。
詳細は、次回にて。
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