長らく、体調不調のため中断し、申し訳ありませんでした。少しずつ体調の回復を見ながらですが、更新を再開いたします。
前回、あの3年前の夏という話がありましたが、それは言うまでもなく「S英予備校の札幌進出」を指します。新規開講の場合、HZ会やR会グループでも無料講習という形で塾継続生確保の策を今までも講じてきましたが、S英のそれは他の大手塾の戦法とは大きな違いがありました。
なにが違ったかというと時期です。北海道の大手塾の場合は、1つの地域単位で新規進出する際は必ず4月新学期開校という手法をとっていました。つまり無料講習は最も利幅のない(損益の少ない)春期講習を対象としていたのです。企業としては、年間の利潤を考えるとそれは仕方ないことでしょう。
ところが、S英は7月開校という中途半端な時期を選んで進出してきました。業界の常識で考えても年間継続生の75%以上を4月に確保するわけですから、7月進出はS英が勝負を捨てたとばかり誤った分析をした大手塾もあったようです。そのような誤解を生んだのは、本州大手のEゼミナールが札幌進出をした際、7月開校にもかかわらず(新規というより他塾買収のため)、有料講習を行い、募集が伸びなかったことも背景にあるようです。
ご存知のようにS英は、2005年度の夏期講習を「無料体験講習」として実施しました。そのとき、いち早く反応したのはHZ会です。資本力のあるHZ会は、同様に無料講習として夏期講習を実施することにしたのです。
結果的にS英とHZ会は、多くの講習生を集めることに成功しました。S英側としてはHZ会のこの動きは予想外であったようで、その後の講習戦略はHZ会の動きを見定めてから決めるようになったのです(顕著だったのは2008年春)。
ところがR会グループ(Sセミナー)は、一切のダンピング戦略をしませんでした。指導の質は見合う受講料を取ってこそと、アピールしたようですが、デフレ傾向の強い時期にそのようなアピールをしても無駄だったのです。募集は惨敗でした。
この時期まではHZ会を脅かす塾として伸びていたSセミナーは、致命的な打撃を受けます。昨今の父母の評判では、S英やHZ会に大きく水をあけられN進学スクールと同等の評価にまで落ち込んでいるようです。
このS英進出事件は、全国の塾業界にも激震をもたらしました。数年後にS英が進出した宮城県では、「札幌の轍を踏むな(暗にSセミナーの失態を指す)」を合言葉に、地元大手塾がS英対策を実施したことにも反映されているのです。
2005年夏の夏期講習以来、各期の講習の価格破壊は一層進行するようになりました。札幌圏において、中3生で42,000~50,000円であった受講料は、2008年では通常コース20,000~39,000円と大きく値を下げています。
安く良い指導を受けられることに喜びを感じる受験生の父母の方も多いと思われますが、値を下げるときは、質を落とすということに気づいているでしょうか?
(1)授業日数の変化
2004年度までは、夏期・冬期とも中3生の授業日数(除テスト)は最低でも14日間ありました。しかし、2008年度では授業日数はHZ会・Sセミナーとも2日減の12日になっています。
(2)授業時間数の変化
2004年度以前は1日当たり約3時間の授業を実施していましたが、S英・HZ会は2時間程度になっているようです。その分、S英では自習室による半強制自習を受講生にさせて、学習時間を保たせているようです。Sセミナーも若干短くなったという話です。
あと、価格面で注意すべきなのは「テスト費が別途」となっていることです。この制度を導入しているのはS英・HZ会・N進学スクールの3つです。R会(Sセミナー)はすべて込での受講料になっています。
それでは、テストを受けたくなければ受けなくてよいのでしょうか?塾継続生はともかく、一般生はそれでもよいようです。というのは、S英・HZ会にとって、テスト込みというのは、かえって募集の障害になるからです。
別項でも掲載しているように、中学生の模試=北海道学力コンクールという構図が北海道では定着しています。かつては受験情報をHZ会と連携しながら発表してきた北海道新聞ですら、本年度版「道新受験情報」では北海道学力コンクール事務局との強力なタイアップで発行しています。
実は、20年ほど前までは合格ボーダー数値資料はHZ会のデータをもとにしていたことが広く知られています(北見地区のみR会データ)。どの時期までHZ会のデータが反映されていたかは定かではないですが、少なくとも2008年度版ではHZ会色は排除されています。塾広告を「道新受験情報」にHZ会が掲載しなかったことでも明らかでしょう。
話を戻しますが、多くの受験生は模試として「北海道学力コンクール」の受験を希望します。しかし、S英やHZ会で講習を受講するとそのチャンスが失われます。それゆえ、「北海道学力コンクール」実施塾での講習受講を望む生徒層が存在するのは事実です。
そこで、テスト受講を希望制にすることによって、授業はHZ会やS英、テストは北海道学力コンクールということが可能になるわけです。この分割できるシステムによってHZ会もかつてのような一体型募集から、募集力を回復してきているようです。
なお、実施塾でありながらテスト費別途としているN進学スクールの意図はまったくわかりません。消費者をなめているのでしょうか?
そのようなわけで、夏期講習はS英進出前後では大きく様変わりしています。いかに各塾が質を下げようと、道教委の学区制変更や選択問題導入などの新基軸導入によって、大手塾は対応コースをすぐさま立ち上げています。これでは、今後も大手塾で講習を受講するムードは変わらないかもしれません。